そして、さらに部屋の奥のフロアへと進む。
すると、そこには研究者のメモがあった。
『後で聞いた話だが男は苛烈な拷問を受けていたようだ。
はじめは不眠責めと水責めが行われ、それでも男が自白しなかったため
おぞましい拷問器具を用いるようになった。
私は先生になぜこのような苛烈な行為に及んだのかを問いただした。
先生は平然として、実験のために必要なことだと答えた。
先生は狂気に取り憑かれているのかもしれない…
先日、あの男が庭に磔にされて晒し者にされていた。
話を聞くと、男はあくまでも濡れ衣であることを主張。
だが、私にはあの男の無実を晴らすことはできそうにない。
私は男が取り押さえられている場面をこの目で見ていないし
そのそも男のことを信用できるほど親しくはなかった。
後日、男はナイフで胸を貫かれ絶命していた。
それからしばらくたち、この地に集められていた男の一人が
他の者から金品を奪った咎で取り押さえられた。
だが先生はなぜかその男を警察に引き渡さず独房に閉じ込めるという処置を行った。
男が盗んだというのが事実であれば司法に任せるのが筋であるはずだが…
ここにある死体は、あの時の男の怨霊が憑依させられているようだ。
悪趣味だがこれも先生の研究と関係があるのだろう。
男の怨霊を祓ってやろう、とりあえずはこの男の磔から解放し弔ってやらねば。』
どうやら男に濡れ衣を着せ、処刑するように仕向けたのは先生のようである。
さらに先生のものと思しき手記が見つかる
『男を磔にして処刑することにした
騙されたことに気がついた男は身の潔白を訴えるがもう遅い
男の自白はすでに取っているのだから。
刻一刻と処刑の日時が迫る中、男の生き長らえようとする意思は高まっていくだろう
最初の生贄はこの男だ。』
部屋を出ると再び廊下で鉈を持った仮面の男に襲われる。
しかし、突然上代真莉亜の持っていた何かが光だし
仮面の男はその光に怯む。
その隙に2人で逃げようとするが上代真莉亜は男に足を掴まれてしまう。
上代真莉亜は意識が朦朧とし、その脳裏にふと過去の記憶が蘇る。
公園のようなところで、自分と親しげに話す男性。
男は自分の顔が怖いことが悩みだと打ち明けている。
気がつくと、上代真莉亜は撮影機材などがあるスタジオのようなところにいた。
しばらく気を失っていた。
どうやらここは銀城瑛翔が最初に気がついた場所のようで
ここまで気を失った上代真莉亜を銀城が運んできてくれたようである。
先ほど、仮面の男が怯んだ理由はわからなかったが
持っていた桃のお守りが消えていることに気がついた。
もしかするとこのお守りが、危険から身を守ってくれたのかもしれない。
このスタジオにも、部屋の行き先を変える台があった。
部屋の中で見つけた不思議なインスタントカメラで写真を撮ると
白い靄のようなものが写り込んだ。
どうやらこのインスタントカメラは霊的なものを撮影することができるようである。
写真で靄のかかっていた付近を調べてみると、写真立てを発見した。
どうやら、この部屋では先ほどと同様に空間の移動を行うために
写真立てに紋章を挟み込む必要があるらしい。
実際に、見つけた写真立てに紋章を挟むと部屋が揺れだした。
揺れが収まり、ドアを開けると部屋の先がまた変わっていた。
ドアの先は階段になっており、その階段を降りていく2人。
降った先のドアを開けて部屋に入ると首筋に鋭い痛みを感じた。
首筋には針が刺さっているのがわかった。
さらに針の先端には紫色の何かが塗られている。毒なのかもしれない。
しばらくすると、手足がジンジン痺れだし体も動かしづらくなりだした。
痺れは徐々に強くなっているように感じる、毒の症状が進行しているのだろう。
早く解毒しないといけない…
ここで研究者のメモを見つける。
『部屋に入った途端鋭い痛みに襲われた
どうやら飛んできた針には毒が塗られていたようだ
なんだか先ほどから手足がジンジンと痺れてメモが取りづらい
痺れは徐々に強くなっているように感じる
猛毒の症状がーまずい状況になった
とにかく症状から毒の種類を特定して
早く解毒しないと命に関わるかもしれない。
いくつか薬剤と思しき容器を発見したがどれがなんだかまるで判別できない
どの薬瓶にもラベルは貼ってあるが残念ながら何も書かれていない。
そういえば霊視の才能がある研究者が
残留思念を文字情報に置き換え『視る』研究をしていた。
任意の箇所にとどまっている特定の強い意思情報を
霊視能力を使い文字化させて視ることができる。
研究成果報告書には物にも何かしらの強い残留思念があれば
読み取りが可能らしいことも書いてあった。
事前情報のないものの内容を射当てる実験の正答率は興味深かった。』
どうやら、写真を撮ると人や物の残留思念が見える霊視のようなことができるらしい。
なんとか、インスタントカメラを駆使して先に銀城の解毒薬を飲ませる。
そして、続いて上代真莉亜も自分の毒に合った解毒剤を飲む。
しかし、上代真莉亜はその場に倒れ込んでしまう。
ここで再び、脳裏に過去の映像が蘇る。
『就職おめでとう蓮司』
『ありがとう、そっちはどうなんだ』
『今の所全滅、やっぱり教師って倍率が高いよね。いいな、現役採用。』
『どうするんだ?』
『講師やりながら、次の教員採用待つかな。わかってたけど厳しいなぁ』
『他にあるだろう、もっと大事なことが』
『きちんと言ってくれなきゃわかりませーん、じゃあ採用通知お待ちしてまーす。』
目が覚めた、どうやら解毒には成功した。
銀城が『ところで蓮司って?』と倒れた上代が口走っていたことを話す。
しかし、上代は蓮司という名前にはまだ身に覚えがなかった。
しかし、少しずつ記憶が戻り始めているのかもしれない。
とりあえず手がかりがなくなった2人は、上代が最初にいた部屋へと戻ることにした。
しかし、最初の部屋のドアが開かなくなっていることに気づいた。
このことから2人は、紋章のカードで動いていたのは空間ではなく
自分たちが各々最初にいた部屋自体がエレベーターのように
上下しているのではないかと予想した。
これならば部屋全体が地震のように揺れていたことも予想がつく。
予想通り、紋章のカードで動いていたのは部屋そのものだった。
そして2人は一度、それぞれの部屋に戻り、新しい手がかりが残されていないか
確認しに行くことにした。
部屋に戻ると机の上にはメモが置かれていた。
『危ないところだった。
研究のために降霊術を行なっていた呪術師の一人が怨霊の類に取り憑かれ
突然周囲にいた他の学者たちに襲い掛かったのだ。
わたしはかろうじて難を逃れたがもし隣にいた男と位置が逆だったら
殺されていたのは私の方だっただろう』
メモを読む限り、昔ここで魔術の研究がされていて
その時に事故が起こったみたいだ。
ここで、仁美さんが『あの人とあまり仲良くしないで』と言ってきた。
あの男とは銀城のことだ。
どうやら仁美は男の人が苦手らしい。
しかし、上代真莉亜はここから出るために協力は必要だと説明し
仁美もそれに納得した。
廊下で銀城と合流すると、写真を見つけていた。
写真のほとんどは猫と一緒に写っている銀城の姿だった。
おそらく記憶を失う前の写真だろう。
特に銀城は失った記憶について思い出す様子はなかったが
7枚あった写真の最後の1枚だけ地面に置かれた石のところに花が添えられていた。
はっきりはわからないが、これは猫が死んでしまった墓なのだろうか。
次に2人は、新しい廊下の一番奥にある部屋にいった。
部屋には百目のような仮面をつけた男と部屋の壁には、いくつもの絵画が飾られている。
奥のものを調べようとするとすかさず仮面の人が道を塞いできた。
頑なに後ろのものを守ろうとしている。
百目の仮面の男をカメラで撮影すると、男は目を焼かれたように苦しみ消えた。
どうやらカメラのストロボの光に弱かったらしい。
男が守っていた机のところで2人は新たな紋章のカードと桃のお守りを手に入れた。
紋章のカードは毎回3枚ある。
1つは上代真莉亜の部屋で使うもの、もう一つは銀城の部屋で使うものだとすると
2人以外にも誰かこの建物に迷い込んだものがいるのかもしれない。
廊下に出ると、再び仮面の男が襲いかかってきた。
しかし、再び桃のお守りが反応し仮面の男は怯む。
さらに、怯んだ拍子に男の仮面が外れ落ちた。
そこにいたのは、見覚えのある顔だった。回想で自分と話していた男だ。
仮面の外れた男は、すぐに去っていった。
ここで再び、過去の記憶が蘇る。
何者かに森で引きずられていた上代真莉亜、運ばれた先には
血まみれですでに絶命している様子の仮面の男がいた。そう蓮司だ。
そして、自分は何者かにナイフで何度も突き刺されていた。
これが自分の記憶であれば、上代真莉亜はすでに生きていないことになる。
つまり今動かしている体は仁美さんのものなのか?
さらに、過去の記憶が蘇る。
上代真莉亜は病院のベッドで寝ている蓮司と話していた。
蓮司は桃アレルギーで、桃を食べると蕁麻疹が出て接触も危険とのことだった。
桃のお守りが、あの男(蓮司)に効いていたのはこれが関係しているのか?
さらに記憶が蘇る。蓮司は、上代真莉亜に土日の予定を訪ね
土曜に講義棟のエレベーターの前で待ち合わせるように伝えていた。
気がつくと、廊下には上代真莉亜だけになっており銀城の姿はなかった。
すぐに、仁美さんに銀城のことを尋ねると『いない』と返された。
おそらく、スタジオに戻っているのだろう。
そしてもう一つ確認しておきたいことがあった。
上代真莉亜が仁美に尋ねる。
『私はあなたに取り憑いているの?』
仁美さんは長い沈黙を経て文字を紡ぎ出した。
『うん』
あの仮面の男の素顔を見たとき、上代真莉亜は少しだけ昔のことを思い出していた。
それは自分が何者かに殺害されたという事実。
つまり死んでいるのは、怨霊として取り付いているのは自分。
自分が仁美さんに取り憑いている。
そのことを仁美は怖くて言い出せなかった。
しかし、上代真莉亜も自分から出ていく方法がわからない。
これからどうすればいいのか、手がかりはないのか。
とにかく、仮面の男の顔は蓮司にそっくりだった。夢の中に出てきた蓮司。
桃のお守りもまた、なくなっている。
やはり偶然じゃない、あのお守りが守ってくれていた。
つまり、あのお守りがあればまたあの仮面の男と話せるかもしれない。
仁美は危ないと上代真莉亜を制止するが、会わない訳にはいかない。
とにかくまずは、銀城と再会することにした。
すると、廊下で一人の男に出会う。
上代真莉亜の外見を見て、『仁美』と勘違いしてきた。
そして、少し疑われながらも仁美との筆談をやって見せ
今上代真莉亜の魂が仁美の体に取り憑いていること。
仁美は左手だけ動かせることを説明し、なんとか信じてもらった。
男の名前は八木純。仁美とは親しい関係のようだ。
そして八木は、ずっと最初に自分がいた部屋に篭っていたという。
これまで上代たちが、怨霊に襲われてきたことを説明するが
あまり信用していなかった八木は、先ほど百目の仮面がいた部屋に
怨霊のことを確かめに一人で駆けていった。
八木を追いかける中で、銀城と合流。
八木純が入っていった部屋へと2人は急いで向かう。
八木純は、向こうを向いて黙ったままだったが
振り向いた彼の顔には百目の仮面がついていた。
襲いかかる八木純に再び、カメラのストロボを焚くと
仮面は剥がれ落ち、八木純は正気を取り戻した。
八木によると、突然仮面が顔に張り付き
何者かに操られるような感覚になったと説明した。
これは怨霊の仕業である。
身を以て体験した八木はここに怨霊がいるという事実を受け止める。
そして、各々の状況をもう一度共有する。
戻った記憶によると上代真莉亜は、すでに死んでおり
今はひとみの身体に取り憑き動いている。
あのナイフで刺されていた感覚からするに、生きているとは思えない。
身体には刺し傷も見当たらないことから、この体は自分のものではない。
つまり、仁美さんのものである事がわかる。
そして、八木純は仁美の夫だった。
八木も気づいた時に千鶴からの電話を受け取っており
『どこかにいる仁美を探してください』とだけ言われていた。
八木には、ここに来る前の記憶がはっきり残っており
仁美の付き添いで病院の待合室にいたはずが
気づいたらこの空間に飛ばされていたという事だった。
仁美が病院に通っていたことに疑問を覚えたが
八木はそのことについて説明はしてくれなかった。
そして、八木は仁美に取り憑いている上代真莉亜を責め始めた。
しかし、出て行こうにも仁美の身体から出る方法もわからない。
上代真莉亜を怨霊と罵る八木に、すかさず仁美が平手打ちをした。
取り憑かれていることは怖いが、今はあくまでも一緒に脱出を目指す
仲間であることを仁美は八木に説得する。
そして、八木はこれまでの発言に対し上代真莉亜に謝罪。
しかし最終的には、上代真莉亜を仁美の身体から追い出し
仁美を助けることが第一であることで合意した。
そして、3人はとりあえず八木が最初にいた部屋へと向かう。
そこには大型のテレビと両目を釘で打ち付けられた人形があった。
するとテレビに突然映像が映し出される。
そこには、休日に動物園に行こうとする八木純と仁美の車内でのやり取りがあった。
どうやら映像は2人の車に取り付けていたドライブレコーダーの記録映像のようだった。
さらにテレビを調べると、裏側にメモリーカードリーダーがついているのを見つけた。
どうやらドライブレコーダーの映像はメモリーカードに記憶されていたようだ。
しかし、八木は記憶喪失ではない。
特に思い出させる記憶などそもそも存在しないはずである。
千鶴がこの空間に3人を集めたのには何か意味がある。
それを解き明かすためには、失った記憶が鍵になるはずだ。
そこで八木のドライブレコーダーの映像から、他の2人の共通点を探すが
- 仁美さんが動物が好きなこと
- 年間パスを持っていたが、たまたま忘れてしまいチケットを八木が払ったこと
以上にわかる事はなかった。
おそらく、財布に入っていた動物園のチケットはこの時のものだろう。
かろうじて共通点といえば、銀城と写っていた猫
そして動物園の映像という共通点ぐらいだった。
共通点探しは後にすることにし、次は八木の部屋にある
部屋移動の方法について調べ始めた。
すると1枚のメモを発見する。
『蓄音機を用いて、霊の声を聞くという試みは一応成功したと言っていいだろう。
だが対象から遠すぎると雑音が激しくうまく録音できないようだ
ある程度対象物に近づけてから録音をするとそれなりに綺麗に録音することができた。』
そして部屋の中でICレコーダーを発見する。
ICレコーダーで周囲の音を録音すると
『抜いて、釘を抜いて』と人形から声が聞こえる。
そして人形から釘を引き抜くと、打ち付けられていた机の部分に
紋章のサイズと一致するカードの跡があった。
どうやら、ここに同じように紋章のカードをセットするようだ。
部屋を動かすと、廊下の先には新しい部屋が広がっていた。
さらに通路の先には薄明かりに照らされて佇む人影が。
先にいたのは、これまでの悪霊同様仮面をつけていた。
しかし、体格は小柄でその手にはランタンを持っていた。
ランタンの仮面は、こちらに危害を加える様子はなく
奥の部屋に誘導するように入っていった。
ドアの先には新しい部屋が広がっていた。
ここでも紋章のカードを手に入れる。
さらに研究者のメモも発見した。
『集められた『学者』たちは日本人だけでなく様々な国から集められているようだ
どうやら先生は東洋魔術だけでなく、西洋魔術も取り入れるつもりのようだ
一体何を研究しているのか、今だに判然としない不気味だ。
それから、どのくらい気づいているものがいるのかはわからないが、
最初に来た時に見かけた女子供の頭数が減って来ているように思える。
気のせいではない。
私は少なくとも日本人に関しては顔を覚えるのは得意だ
このことを先生に尋ねてみると、里に帰ったと説明された
本当にそうなのだろうか?』
さらに、七惑星に関する資料、九星気学に関する資料、惑星の並びに関する資料も発見する。
さらに、メモリーカードと竹製のしおりも発見した。
結局、この部屋に入っていったランタンの仮面を見つける事はできなかった。
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