そして笑い出す銀城。

銀城は初めから記憶喪失ではなかった。

誰が敵かわからなかったから、ずっと記憶のないフリをして

危険な千鶴を始末してくれるのを待っていたようだ。

 

そして、倒れた八木に銀城はとどめを刺そうとする。

しかし、突然上代が左手からナイフを取り出し、銀城のお腹にナイフを突き立てる。

上代ではなく、仁美さんの左腕だ。

しかし、それでも抵抗して襲いかかって来る銀城を上代は突き飛ばし

銀城は床に頭を打ち付け動かなくなってしまう。

 

しばらく、自身が銀城の命を奪ってしまったことに対する後悔の気持ちから

泣き続ける上代だったが、八木に慰められ先へ進むことにする。

 

せめてもの償いと、花瓶に生けられていた紫色の花を

床に横たわる銀城の元へ添えようとすると、突然銀城が立ち上がった。

銀城は死んだまま怨霊として蘇ったのだ。

そして、2人はその場をすぐに離れ銀城の元から逃げ出した。

 

逃げる中廊下には1つのメモが落ちていた。

『約束の日に待っている』

上代はこの懐かしい文字に見覚えがあった、しかしなぜこんなところに。

 

そして2人は、約束の日である土曜日、土星の惑星記号の

紋章カードを使い廊下へと出た。

すると、銀城に待ち伏せられ首を絞められ襲われる。

意識が朦朧とする中、銀城の首が鉈で切り落とされる。

そこにいたのは蓮司だった。

上代は蓮司に感謝の言葉を伝え

『千鶴が待ってる

もし生まれ変わることができたら、今度こそ幸せになろう』

と伝えると、蓮司は深く頷き切り落とした銀城の首を片手に廊下の奥へと消えていった。

 

八木はその様子を見て、上代に記憶が戻ったのかと尋ねる。

『そうみたいです、多分私が銀城さんを●したから反魂の儀が完了したのかも』

 

『じゃあ、仁美は…?』

 

すると、左手の仁美さんから筆談の合図が来た。

『いるよ』

 

上代に記憶は戻ったが、まだ完全には反魂の儀は完了していないようだった。

 

そして、仁美さんは八木に話があると言って筆談で

上代真莉亜に生き返ってほしいこと

病院に行く最中、助けを求める上代を見●しにた償いをしたい旨を伝える。

 

必死に八木は反論する。

 

しかし、反魂の儀をコントロールできる千鶴はもういない。

出て行こうにも体から出る方法がわからない。

 

仁美さんの意思は固く、八木はついに上代を生き返らせることを受け入れた。

 

そして、2人はまだ詳しく調べていなかった千鶴の祭壇を調べることにする。

そこでは桃のお守りを拾った。

奥の部屋には、またランタンの仮面の人がいた。

誘導するように歩くランタンの仮面について行くと花瓶の中に2枚の紙を見つける。

 

『考えるまでもなく『反魂の儀』は危険であり、倫理にも反する魔術だ。

私は意を決して反魂の儀を止める方法を探ることにした。

 

私のようにその手の才能がなくても使えるあの特殊な紙を使おう。

 

酒の席で仲良くなったとある研究者の開発作品だ。

研究の機密事項を記録できるようにと彼からプレゼントされた。

 

ある日突然、彼の姿が消えた。

研究が終わり帰ったと聞かされたが。

ー残念ながらもう彼はこの世にいないのだろう

彼もまた、反魂の儀について気づいていたから消されたんだ。

 

あの研究者には心から感謝している。

彼の無念も晴らしてやりたい。

この手記もそう簡単には見つからないようにしなければ。』

 

『反魂の儀を止めるために唯一にして簡単な方法は

蘇生のための生贄から仮面を外し、魔術の影響下から外してやることだ

反魂の儀の要は霊媒として用いられているあの仮面だ。

反魂の儀が完了する前に仮面を外してやれば儀式を中断することができる。

 

ただ、最大の問題は身につけている本人が外さなければならないと言う点。

反魂の儀の特徴は生贄の生きようとする意思を引き出し

それをエネルギー源として仮面にいる自分ではない存在を自分として受け入れさせ

元の魂を追い出して定着させることにある。

 

これを止めるためには、装着されている者自身が生きようとする意思を

拒絶する必要があるためだ。

魔術の影響下から外すには、仮面を外すだけでは足りない。

術者が術を取りやめるのが一番だが、それが叶わない場合

物理的に術式の場から遠ざけることができれば影響下から

遠ざけることができるだろう。』

 

反魂の儀を止めるには仮面を外せばいい…

しかし、上代は仮面なんてつけていなかった。

 

千鶴がやり方を間違えていたとも考えにくい。

しばらく調べると、上代の耳にはイヤリングがついていた。

しかも、形状がどことなく仮面に似ている。

仁美さんや八木に聞いてもこんなイヤリングには見覚えがないと言う。

形は違うが、これが儀式に必要な仮面なのだろう。

 

上代はすぐにイヤリングを外そうとするが

左手の仁美さんがそれを外そうとしない。

 

『生き帰りたくないの?』

筆談で仁美さんは話す。

 

しかし上代は、すでに死人、仁美さんの命を奪ってまで生き返るつもりはない。

と答える。

 

『いきるもくてきがない』

流産で灯里を亡くしてしまった仁美には生きる目的がなかった。

 

しかし、仁美さんにはまだ純がいる。

『あなたを求めている人がいる、あなたはあなたの人生を生きて』

 

そう言うと仁美さんは『わかった』といい

2人で仮面のイヤリングを外した。

 

そのまま、ランタンの仮面が導くままについていくと

これまで開かなかったドアの前で立ち止まった。

部屋の前にはポツンと机だけがある、ランタンの仮面はいなくなっていた。

 

そしてメモを見つける。

 

『反魂の儀を行うためにはまず蘇らせたい対象を過不足なく揃える必要がある。

これは死体を過不足なく揃えると言う意味ではなく霊的に完全である必要がある。

何らかの理由で不足している場合は補う必要があるが

これは蘇らせる対象が自分の意思で行う必要がある。

たとえ術者であっても代わりに揃えることはできない。

 

次に生贄が必要だ

反魂の儀では蘇らせたい対象の魂を生贄の体に仮面を介して憑依させ

自分とは異なる他人を自分の体として受け入れさせることで元の魂を置い出して定着させる。

なお一体だけでは生贄は足りず複数体いるのが望ましい。

反魂の儀では蘇らせたい対象を含めた生贄たちの

生きようとする意思をエネルギーとしている。

それを最大限引き出すことで儀式発動が可能となり

そのものたちには命がけの試練に興じさせる必要がある。』

 

反魂の儀について理解した2人はまた現れたランタンの仮面についていく。

すると、ひらけて明るい部屋に出た。

 

ここまで導いてくれた、ランタンの仮面に確かめなければならない。

『あなたは誰?

どうして私たちを助けてくれるの?』

そういって、上代はランタンの仮面の人に手を伸ばした。

その手が仮面の人に触れた瞬間、ある場面が脳裏に映し出された。

病院にたどり着き、病院の扉を叩き助けを求める純。

そして、医者と純が話している。

『母体の方は救えました。命に別状もありません。

ただお子さんの方は…』

あまりのショックに仁美は軽度の鬱症状になってしまった。

手には安産祈願のお守りを握りしめながら、泣き続ける仁美。

 

『この子、灯里ちゃんです。

でももう長くはいられないみたい。』

 

ランタンの正体は灯里だった。

 

死んで霊になっても、自分のお父さんとお母さんを守り続けていた灯里。

純は、灯里に『今までありがとう』と感謝の言葉を伝え抱きしめると

灯里は消えてしまう。

扉の先は今までとは違い光が漏れている。

純は、上代に対する思いを全て打ち明けた。

見●しにしてしまった後悔、それでも仁美に生き返ってほしいという気持ち。

 

仁美は最後に筆談で

『ごめ』と書き、その手を止めメモ帳を破り捨てると

『ありがとう』と書き改めた。

 

『そろそろみたい』

 

そう言うと仁美の身体から上代真莉亜の魂が抜けていく。

 

目覚めた仁美に純が駆け寄る。

『うん、真莉亜はもういない

私、生きたい。真莉亜と灯里と純の繋いでくれた命を無駄にしたくない』

 

再び生きる気力を取り戻した仁美。

 

『帰ろう』

 

2人で扉を抜ける。

目覚めると2人は病院にいた。

お互いに助かったことを確かめ合い抱き合う2人。

 

数ヶ月後。

銀城家の管理している敷地内から大量の遺体が発見され

各種メディアで報道されることになった。

銀城瑛翔が行方不明になっていることと合わせて憶測を呼び

警察の捜査の手が伸びている。

 

そもそもの発端となった通報を誰が行ったのかについては

公表されず謎に包まれている。

 

クローズドナイトメア(CLOSED NIGHTMARE)のストーリー考察

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